#title a:before { content: url("http://www.hatena.ne.jp/users/{shikukan}/profile.gif"); }

河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

その輝きを見つめるために── 二〇一〇年六月十日という出会いの日に

その輝きを見つめるために── 二〇一〇年六月十日という出会いの日に                                   河津聖恵

光はまっすぐに降りてくる
あなたには
たえまなく いやおうもなく ふせぎようもなく
あなたがうつむく地の赤さが
空の青を引き寄せるように
その光をひとは見ない
あなた自身にも見えないだろう
それが、見えた、見える、見えている
なぜだろう
私はどうしてあなたの前で
自分自身の渇きを癒すかのように
あなたの涙を見つめているのだろう
その輝きに魅惑されているのだろう

目のまえで止まったように落ちていくのは
非在それとも存在
光それとも翳
(手をのばすことができない)
揺らぎやすい天秤にたえかね
またひとしずく
美しい瞳をあふれ夢のようにゆっくりこぼれ落ちていく
悲しみの時間を
まるで歓喜のように引き延ばしながら
こぼされる、ではなく、こぼれていく、という痛苦
(手をのばすことはできない)
涙自身のかすかな意志
私の真芯を
しんとすりぬけていくか細い天の柱よ

あなたには生誕から
まっすぐにかかりやまない重力がある
今落ちていく光は
どんな言葉よりも鋭くその真実を教える
ひとつずつは空気の糸のようにほそく
誰にも気づかれはせず
死ぬ日までふりやみもしない
ときには悪意のように束ねられ
あなたが神話の奴隷のように背負う
光のない真夜中もあるだろう
こぼしてもこぼしても
重力を洗われない悲しみのときは
世界の底で魂の衣服を砂でこすりつづける
その無数の夜々を映し出し
あなたの美しい瞳からふるえながら
またこぼれていく光
小さなちいさな「すべて」

誰が知ろうとしてきたか
そのたびに
あなたが見上げられない天の光が
とうとくそこにあつめられていくことを
今日初めて会った私も
遥かからあなたの涙に導かれてきた
あなたが生まれ落ちたこの冷たい石の世界に
こぼされる、ではなく、まっすぐにこぼれていく意志で
生きた歳月のかたちのままに穿ち、創造した
あまりにも繊細な水脈
をわれしらず辿り
今あなたの前に辿り着いた
あなたに見えないまま落ちていく
あなたの輝きを見つめるために