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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

リーフレット『朝鮮学校無償化除外反対・言葉を紡ぐ者は訴えます』から

リーフレットに掲載した私の文章をアップします。

除外反対を切に訴えます
                                
                                       河津聖恵(詩人)

朝鮮高級学校を高校無償化の対象から外すことを、私は間違いだと痛感し、同じ憤りを持つ詩人たちと3月7日にアピールを出しました。直接的には3月4日に報道された大阪府橋下知事の問題発言への抗議としてです。各団体で多くのアピールが出たものの、国民的なうねりとなって政府を突き動かすまでに至らず、当面除外という残念な結果となりました。しかしこれからが勝負だと思います。

 ほんとうはこの国の誰もが、除外は間違いだと思っているのではないでしょうか。ただ誰もが何かを恐れ、声をひそめて、背を向けているのではないでしょうか。しかし恐れずに、今を共に生きる人間として、未来の子供を慈しむべき大人として、私たちは声をあげるべきです。想像しなければなりません。朝鮮高級学校の無償化除外が、子供たちの心をどんなに傷つけたか。法案の理念そのものを裏切った当面の除外決定と、閣僚や首長がマスコミに流しつづける誹謗中傷が、在日の方々をどんなに絶望させているか。そしてそれらを想像せず見過ごすことが、この社会のモラルをどんなに劣化させていくか、を。こうした今の状況は、人間の魂がより気高く自由であるために言葉を模索し駆使しつづけるべき詩人にとって、まさに危機的な状況であるはずです。詩人はそのことに鋭敏に震撼とし、その亀裂から言葉を汲み上げなくてはなりません。

 高校無償化法案は、そもそも外国人学校も対象に含めることを想定しており、朝鮮学校も積算に入れた新年度予算案になっていました。にもかかわらず、昨年末中井洽拉致担当相は、子供たちに平等に教育を施すという法案の理念とは真逆の、政治的・差別的提起を行い、待ったをかけました。それに対し川端文部科学相は、筋違いだと明言しています。それにもかかわらず鳩山首相は、本来は最も尊重すべき担当閣僚の見解を尊重しないまま、拉致担当相(拉致担当があるのならば、国交正常化担当もまたあるべきではないでしょうか)という、教育とは全く関係のない政治・外交問題の担当閣僚の意見へひきずられてしまいました。その結果として、首相は朝鮮学校を当面除外するという、社会的に影響の甚大な裁定を下しました。

 一国民である私にとって、今回の除外に至るまでの経緯はまったく闇に包まれています。誰もが教育を平等に受けられるように経済支援をするというこの法案の理念が、この社会にせっかく灯した光も、闇にかき曇らされてしまいました。

 なぜこのような結果となったのでしょうか。なぜ予算案が出来ていた段階で、拉致担当相が横やりを入れたのか。そして文部科学相が、外交上の問題や教育の中身は判断の材料にしない、と言ったにもかかわらず、首相はなぜ拉致担当相の意見の方に賛同していったのか。首相は、文部科学相と対話を十分に行ったのでしょうか。大変疑問です。すべては国民の窺い知れない闇の中で進行していったという印象を拭いきれません。教育も外交も国家の未来に関わる大切な問題です。うやむやな言葉や曖昧な論理で、ないがしろにしないで下さい。きちんと国民に向き合い、ここにいるこの私にも向き合い、ものを言って下さい。世間の風評に同調し支持者の歓心を買おうとするだけの、思想も表現も貧しい言葉を使う自分を、国の指導者として恥じて下さい。

 朝鮮学校の生徒たちは、私たちの間違った過去から受け取ることのできたかけがえのない宝物です。そして国交正常化した平和な未来に対して、私たちが責任を持って届けなくてはならない贈り物です。そのことに深く思い至り、私たちは感謝し、未来への責任を必ず果たさなくてはなりません。詩人にとって最も大切である詩という次元、つまり魂と言葉という次元で、除外反対を切に訴えます。