眠れない
私は いいえ私など眠っている
四千の柔らかなまなここそは
今 眠ることはできない
残酷な九月の闇に晒されているはずだ
光のような闇
闇のような光
六十五年の突端で
この国はそんなものしか
点すことができなかったのか?
誰よりも未来をめざすかれらの靴先を
照らそうともせずに
いったいこの国をどこへ導こうというのか
テレビ画面に露出した
あの怪物のようなエゴの切っ先をひからせた漆黒の目
気力のしぼんだぬけがらの声の答弁
そんなものたちが
この国の空虚に
危険な火をつけようとしている
(誰もがみな知っているはずだ)
言葉を涙のようにこぼせていける
私たち日本人はしあわせだ
子供たちはもう涙を言葉のようにこぼせない
きっと黙って
ねむっているふりをしている
アボジもオモニも
ハラボジもハルモニも
涙ならば沈黙へちんもくへと
流れ星のように見届けてきたのだから と
心をくいしばって
けれど柔らかな涙がより柔らかな悲しみを
内側から傷つけている
眠れない子供を
私たちの無関心が傷つけている
(誰もがみな知っているはずだ)
子供たちは事業仕分けの対象なのか
ちがうだろう
最小不幸を分け与えてあげるのでもないだろう
最大幸福を積んだボートに
まず一番に乗せてあげる
それが私たち大人の喜びのはずだろう
けものにさえもならずして
生ける骸と豪語し笑っているのだろうか
誰もがみな知っているはずだ