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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

夜の生けるドーム

今、原爆ドームは何を想っているのでしょうか。 P3250010_2

今日はきっと65年前以上に暑かったはずの広島。
パン・ギムン国連事務総長や米英仏の代表が初参列したと新聞で読みました。
この方はアメリカでの被爆者の命がけの証言に、心を動かされたのでしたね。
人の思いがまた別な人の思いを動かしていく。
そうして少しずつ人間の歴史は
犯した罪をかえりみてはおのれをただし
ゆきつもどりつ
よい方向に進んでいくはず。
そう信じたいです。

私もこの4月に、広島を30年振りで訪れました。
訪れたその日の夜
原爆ドームのわきを通り過ぎました。
そのときの写真。

昼間遠くから見るドームとはまったく違う
異様な「気」を感じました。
ぞっとするような
たとえばダンテの冷たい地獄に吹く風のような
ただならぬ霊気を。

内部からライトアップされたドームは
死ねない頭骸骨のような執念をかんじさせるなにかが
たしかにありました。
崩れ落ちたままに維持された
柱もふと目にとまりました。

そう、このドームには
人間というものを破壊した悪魔の爪痕が
爪痕のまま保存されているのでした。
アウシュヴィッツでもそうですが
傷こそを
そのまま保存するための努力がつづけられているのです。

人間のもつ悪魔の爪に未来をもぎとられた人々の思いが
夜の生けるドームには
たしかにただよっていました。
誰かがいる、何かをいおうとしている・・
一周して立ち去ったのですが、
ドームが小さくなるに従い
怖ろしい霊気は哀切に見送る気配に
変わっていったのです。

今、ドームは穴の目に闇をたたえ
ききとどけられない痛みと訴えのすべてを引き受け
やはり今夜も眠ることはできないはずです。