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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

紀伊山地に林業の現場をたずねて

金曜夜から日曜夕方まで、紀州・熊野の田辺に行ってきました。Image1423
今回の目的は、紀伊山地に入ること。
倉田昌紀さんを介して、植林から住宅販売まで一貫して手がける、地元の老舗山長商店の方々に山を案内していただきました。

日曜日、うっすら雲がかかりながらも、青空が透ける田辺。
天気に恵まれつつ、山たち木たちに会いに、あわよくば熊楠も聞いたであろう粘菌の歌に耳を澄ませに(!?)と
山に入りました。

半日、紀伊山地林業の現場を見て回りました。
散策や登山ではなく、
労働や保水や経済やエネルギーという視点で入った山は、何だかちがう。Image1422
山の切り出し現場の道は悪く
泥道に渡された丸太(私の一番苦手とする足場です)をひやひやしながら
渡ったり、急斜面を降りたり。

しかし山の労働現場は新鮮でした。
若い人が最新鋭のパワーショベルを駆使し
杉と桧を次々切り出していく。
切り出すだけでなく、同時に枝葉も削っていく。
どの木をどんな長さに切るかも、経験から一瞬で判断する。
そこへ別のパワーショベルが素早く来てさっと運搬して積みあげる・・。

林業は今すたれていると言われますが、
機械はめざましく進歩しています。
(だから労働者の怪我の危険も少なくなっている)
しかし機械による作業の効率化は進む一方で、
五十年サイクルで木の成長を見守るという基本は同じ。
手間がかかりすぎ、やはり「林業は今商売にならない」と責任者の方が言っていました。

今、林業を苦しめるのは、
人手不足、円高、住宅不況、製材で出る産廃問題、獣害、高額の設備投資等。
林業全体を蘇生させるのは難しいようです。
でも、山を愛し、山の仕事を誇りにして語る男たちの笑顔は素晴らしかったです。
農業と同じく、林業も日本の心臓だと感じました。

製材所では年輪に見とれました。Image1419
材木のお尻に並んだ年輪は一つ一つ表情が違うのです。
個性ゆたかなアンモナイトの化石のようでした。
桧は白いのに対し、杉は真ん中が赤いんです(右写真)。
中心が一方に寄っているのは、斜面で木が踏ん張った証拠とのこと。
カミキリ虫の巣の痕もご愛嬌です。
木のどの位置かで、わっかの数も変わるのも初めて知りました(尖端に行くほど、幹は新しいのですから、年輪は減るのです)。

今回紀州・熊野で、出会った山びとたち、木たちが
私に残したものも
見えない年輪となってたしかに刻まれたと感じています。
いつか詩になればいいなと思います。

なお今回案内していただいた山長商店のサイト(http://www.yamacho-net.co.jp/)で、林業について色々知ることができます。