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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

「話し手は誰」倉田昌紀

「とても軽い詩のような拙文です。送信するのもためらってしまいます。」と
昨日の雨降る紀州から送信がありました。
私も経験があるのですが、
病を得て気持も弱っている時、
これまでに会ったことのないような人がふいに現れて、
これまでに聞いたことのないような声で
生の真実を告げてくれる不思議。
「寿命」とは
じつは本当はすごい励ましの言葉ではないでしょうか。

話し手は誰

                    倉田昌紀

話し言葉は生きています
沈黙も間も対人関係の微妙さのなかで生きてきます
人柄も親和力もうねってきます
涙もでます
絶句もします

話し言葉はすぐに死んでもしまいます
言葉の霊は逃げていきます
音質から魂は消え
形式がのさばってきます
言葉数が増えてくるかもしれません
言葉が固まってしまいます

「寿命とゆうものがあるさかいになあ」老婆が励ましてくれます
心を込めて専念して歩まねばなりません
老婆の雰囲気が全身でそう伝えてくれているようです
朴訥な話し言葉は一瞬ぼくの内部でもがきます
そしてぼくは空っぽになってしまいました

話してくれたのはほんとうに老婆だったのか
話し手は誰
話し手がないことはいいことだなあ
話し手があることはいいことだなあ