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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

詩「ムグンファ ──一人無声デモをする友のために」

(本日付「しんぶん赤旗」に詩が掲載されました。)

ムグンファ ──一人無声デモをする友のために
                            河津聖恵

高台から見下ろす街の夜明け
ムグンファの汚れない光が花ひらき
この街が誰しもの故郷のように柔らぐ時刻
遙かな祖先の汗の匂いをたてる大路を
(今だ!)朝鮮虎の蒼い影は駆けだし
この国の閉ざされた心をふたたび舞う
通信使と民衆の歓喜の花びらの幻

街よ、花もとまどう真実の朝を祝福せよ
偽の眠りよ、脈打つ獣の熱に目を見開け

切り立てのプラカードの柄が風に鋭く光る
(今だ!)あなたの手はその痛みを掴む
「朝鮮高(級)生にも授業料免除を!」
天の赤と地の青とで書かれた文字を
頭上に掲げれば空の血は引いていくか
遠ざかる車の音 凝視するガラスの目 
見て見ぬふりの通行人は
何を考え感じるのか(顔はみえない)
ひりひりとしたあなたの不信は
掌が握る痛みを芯にこの街を花ひらく
(これもムグンファか・・・)
やがて不信はたった一人の悲しみとなり
一人の悲しみを無数の悲しみが励ましていく
(そうだ、ムグンファ! 
 闇から希望へ向き直る花の恨(ハン)の力だ!)

今ふり仰ぐ人のまなざしを受け止め
空よ、未来の子供たちのために色を深めよ
また一歩冷たい空気を歩む者の決意を感受し
地よ、恐れず声をあげる獣のために道を拓け

夜 無人のハッキョが高台から見るのは
星座のように瞬き 愛と痛みに捩れながら
なおも花ひらこうとする私たちのムグンファ  

*ムグンファは朝鮮語で「ムクゲ」、ハッキョは「学校」。