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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

季村敏夫『ノミトビヒヨシマルの独言』(書誌山田)

阪神大震災から今日で16年となります。Image1191
あの日、京都では震度5でしたが
それでもあんな恐ろしい体験は初めてでした。
被災地であった場所では今
どんな思いが蘇り交錯していることでしょう。

今日という日に季村敏夫さんの新詩集を紹介することには
深い意味を感じます。

季村さんは震災で経営していた会社の社屋が全壊し
会社の再建に向けて奮闘しながら被災の心情を詩に綴ってきました。
また記憶の風化に抗うために「震災・まちのアーカイブ」をひらき
「〔記憶・歴史・表現〕フォーラム」を立ち上げるなど
様々な試みをされてきました。

この詩集では震災ではなく、
自分の親族の戦争の記憶に想像を馳せています。
しかしここにはただ記憶を確認したいという以上に
死者の感覚を感じ取りたい、という深い欲望があるのです。
その点においてこの詩集の奥底には
『日々のすみか』などと同じく
震災の死者への思いもまたつよく存在していると感じます。

とりわけ末尾から二番目の作品からは
あの日の死者生者の魂の振動が伝わってきます。
あの日、冬は切り裂かれ、真夏になったのでしょうか。

My Blue Heaven

もう、いい、もう、いいから

(いいからといって、いったい何がいいのか)

はなたれた、最後の息
息が、乗り移る
死者が 生者に 覆いかぶさる

(く、だ、さ、い、、
 く、く、、、、だ、、さ、 、、、)

そこで、もっとも美しく輝いていたとき、彼らは消滅する

もはや、もう、何をも、おもい、だせなく、
おもい、だしたく、なく、

もっとも美しい夏の、夏にふさわしい、それが流儀だと、うそぶく

もう、いい、もう、いいから
たくされたことば、残したかった、おもい

もういい、もう、息が絶える

(いいからといって、いったい、何がいいのか)

横顔ゆれ、これで見納め、と、横たわる人の髪を切り、背中を向ける。
うつむいて。うずくまって。横顔、ゆれ。

もはや、もう、何をも、おもい、だ、せ、な、く
おもい、だし、たく、なく、
いっさいを、
空の、
青に、
従わせる