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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

大門正克『戦争と戦後を生きる』(小学館)

歴史という言葉にずっと惹かれていました。Image711
漢字の佇まいも美しいし、
レキシ、というrとkとs音のつらなりがとてもきれい。

じつは時間の方はあまり好きではないです。
漢字のかたちが四角っぽくて、硬く物質的だし
イメージとしてもただ歯車が動き続けるよう。
ジカン、と最後がンで終わるのも
とりつくしまがない感じがします。

でもレキシは、最後のシが遙かな過去へと向かっていきます・・・。

中学生や高校生の頃、
私は科目としての歴史は大の苦手でした。
とりわけ日本史が・・・。
中学校は途中で転校したので
前の学校で日本の歴史が途中だったのに
後の学校では世界の歴史になっていた。
高校では日本史を選択しなかったし、
恥ずかしながら、日本の歴史は戦国時代から
すっぽり抜けています。
(戦国の武将のあれこれなど、私に絶対きかないでくださいね・・)

大門正克『戦争と戦後を生きる』(全集「日本の歴史」第15巻・小学館)。
この本はほんとうに面白かったです。
私からもしかしたら戦国時代よりもぽっかりと抜けている
日本の現代史を
しっかり教えてくれました。
昨年3月に出た本です。

1930年代から1955年までを扱っています。
激動の時代を生き抜いた人々の言葉や軌跡に焦点を当てながら
人々と国家とのかかわりと
人と人とのつながりが織りなす歴史の生命力を
生き生きと蘇らせていきます。
歴史というものの人間的なざわめきを
私(などの非歴女!)にもまざまざと、
この本はしなやかに感触させてくれたのでした。

貫くテーマは「生存」。

「本書で見据えたのは相互交渉のなかの「生存」の過程である。生存をめぐる相互交渉の過程としての歴史、総力戦をふくむ二五年間を生存の視点で貫く通史の構想、これが本書でめざしたことであった。」(「おわりに」)

なんと吉原幸子谷川俊太郎も出てきます。
詩人にぜひ読んでもらいたい一書なので
しばらくここでご紹介したいと思います。