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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

詩「チンダレ」

チンダレ──空と風と星の詩人に
                 
さくら れんぎょう 雪やなぎ
花がやわらかにひらかれていく
やわらかにひらかれていく花は
すでにひかりである 空である
風 星 蝶々 わたし あなた
ふたたびめぐりくるのではない
かつてひらかれはじめたものが
うけとめられ韻きふるえている
種はいのちがけでひらいた傷の
透明な血と痛みにやさしくたえ
水の悲しみと歓びにあやされて
ここまで来て 今ひかりになる
空 風 星々 あした きのう
はるかなきのう たしかにいた
はるかなあした たしかにいる
あなたとわたしを隔たる時間を
おおきな花がいちりん咲き続け           
ちいさな花がかぎりなくみちて
瞬くまにうけとめてる韻いてる
ひとつらなりの引力みたいな花
たしかにいた花たしかにいる花
さくら れんぎょう 雪やなぎ
花のなかにはなんと多くの人の
めまいが韻きのこっているのか
かなわぬ思いが透明に打ち震え
見果てぬまなざしはげしく震え
いつしか瞳は水となってふるえ
花に隠れている影をうつしだす
はるかなきのうから香りがくる
わたしはしる その日あなたが
たった一つの花さえも逃さずに
幻視したこと いのちをあげて
未来の花をまなざしきったこと
空 風 星 蝶 ひかりひかり
いのちをあげいのちをうつした
色 やわらかさ やさしさが今
隔たりをふるえ韻き 花ひらく
紫に輝くあれはきっとチンダレ
手の届かない空のとても近くに
咲き誇るききとりがたいことば
鮮やかな幼い日の追憶のような
色 やわらかさ やさしさが今
たった一つのそしてかぎりない
かなしみとよろこびをあやして
わたしたちという花をひろげて
まばゆいひかりとなり咲き誇る

*正確には「チンダ(ル)レ」