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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

9月29日朝鮮大学を見学しました

一昨日、東京の小平市にある朝鮮大学を訪問しました。
これで3度目。Image874_2
今回は、歴史学者の大門正克さんと一緒ということで、
ちょっと気がひきしまりました。

大門さんとは4月に出したアピール文がきっかけで知り合いましたが
出会った時期がちょうど
小平の地域史で朝大をどう記述するかと考えていたときだったということで
とても不思議なご縁を感じています。

鷹の台から雨上がりの玉川上水を歩いて十五分位で大学に着きました。
玉川上水の武蔵野の面影は
東京で生まれ育った私の無意識をいつもくすぐります。
木の根っこのあらわな土の上を歩くのですから。
中上健次が娘に言葉を教えながら歩いたのも、たしか玉川上水沿いだったと思いますが、この辺りだったのでしょうか)

大学正門でピョン・ジェス先生が出迎えてくれました。Image875
先生とは私の詩を朝鮮新報で取り上げてもらってからの仲ですが
なにかもう、昔の恩師に再会したような気分。
今回は、アンソロジーに参加していただいた呉香淑さん、孫志遠さんにも
お付き合いいただきました。
また学長先生とも少しだけですがお話できました。

自然と歴史の博物館(3度目の私は、けっこうどこに何があるか分かるようになりました。精巧な青銅器のペンダントや、朝鮮虎の微妙な縞目や、青磁の色に見入りました。あと地形をあまりにも正確に再現した朝鮮半島の模型ですね)

色々見学しながらみなで雑談するのも楽しかったです。

何よりもよかったのは
生徒さんたちからお話をきく時間が持てたこと。
国語学部の日本語科と日本文学科の生徒さんたちで
文学系ということもなんだか親しみを感じました。

みなが朝鮮大学について一様に言っていたのは
いつも友だちがよこにいる、という楽しさと安心感。
(朝大は全寮制です)
在日朝鮮人のための大学はこの大学だけなので
全国から生徒が集まってくるけれど
その分最初はホームシックにかかるそう。
しかししばらくすれば、今度は「朝大シック」。
友だちは家族なんですね。
(私も学生時代下宿していましたが
けっこう友だちとの生活ではいらいらしぶつかることが多かったので
羨ましいと思いました)
「情」が深まると言った人もいました。
一緒に寝食をともにすることで生まれる
友情より深い「情」。

たしかに見ていてもみなとても仲が良く
一緒にいるだけで楽しそう。
「一緒にいるだけでたのしい」
というのは箸が転げてもおかしい、にも似ているのでしょう。
そういう友だちの存在こそが生きているよろこびなんだ、と
私もあらためて新鮮に思いました。

朝鮮大学とはかれらにとって
自分のやりたいことをはっきりさせてくれる
何のために、誰のために生きるのかを考えさせてくれるところ
一人一人が自分のアイデンティティに対して問いかけるところ
だそうです。

文学を選んだのはなぜ?
文学は世界観を深めてくれるし、本格的に文学を知りたかったから。
実際勉強してみると知らないことがすごくあるなあと分かった。
そして文学は歴史を知らないとだめだ、と。
時代背景が大切ですね──

そう語る文学者の卵たちの話に
私も思わずうんうんとうなずいていました。
芥川龍之介村上春樹茨木のり子谷川俊太郎を通し
かれらは日本を、世界をしっかり見ているんですね。

いずれにしてもこの学生さんたちとの対話では
かれらのかがやく生命力に魅せられ、教えられたものが多かったです。

とにかく楽しい半日でした!