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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

中国吉林省・延辺朝鮮族自治州をめぐって�I8月24日後半(1)

明東村。Imgp0587

時を超えた壺中天のような美しく素朴なその村は、まさに東柱の詩の奥底にある永遠の風景、魂の至福のありかに思えました。

恐らく幼年の詩人が駆けていた頃と変わらないだろう舗装されていないなつかしい田舎道。
その両脇をたくさんの秋桜が揺れていて、
道行く人に優しい言葉をかけてくれるよう。

どこからか鶏の声も聞こえ
くさむらからは澄んだ軽やかな虫の音が永遠のようにころころと…

ふと詩「新しい道」を思い出しました(訳はすべて伊吹郷訳)。

川を渡って森へ/峠を越えて村へ//昨日もゆき 今日もゆく/わたしの道 新しい道//たんぽぽが咲き かささぎが翔び/娘が通り 風がそよぎ//わたしの道は つねに新しい道/今日も…… 明日も……//川を渡って森へ/峠を越えて村へ

村長さんの家をたずねていくとImgp0579
村長さんはおらず、お姉さんと娘さんがいました。
そしてとても人なつこい可愛い犬も(この旅で出会う犬のすべてが、放し飼いでとても人なつこいのでした。)
庭には背の高いとうもろこしも。

愛沢さんはかつて村長さんの家に泊まったそうです。
夜、トイレに起きて夜空を見上げたら素晴らしい銀河が
北から南に流れていて感動したそうです。
なんともうらやましい話。

Imgp0585
やがて道の向こうから村長さんが走ってやってきました。
素敵なシャツを着たなかなか若い村長さんです。
愛沢さんと久しぶりの再会で二人とも嬉しそう。
これから道案内がてらお墓参りにも同伴してくれるとのことで助かりました。

愛沢さんと丁章さんと私はもう少し東柱の世界を堪能したいとImgp0592
残りのみんなに待っていて貰い、さらに村の探索へ。
村に分け入るほどにまさに東柱の詩が煌めき立ち上がってくるような気がしました。

先ほど記念館の敷地に復元されていた明東学校の実際の跡地には記念碑が建っていました。1920年学校は間島大討伐の中で日本軍に焼かれた後、1922年にやはり日本軍によって元通りに再建されました。1917年生まれの東柱は再建された校舎に通ったことになります。

その記念碑辺りを過ぎた辺りで「あっちに小川があるよ」とImgp0597
愛沢さんが言ったので水たまりを避けて何とかついて行くと
小川という名前にまさにふさわしい水の流れが!!
川縁が何の補強もされていない土のままの、懐かしすぎる「小川」です。忘れていた「小川」なる存在の幼さ、柔らかさ・・・

おのずと「春」という詩を思い出しました。

春が血管の中を小川のように流れ/どく、どく、小川ちかくの丘に/れんぎょう、つつじ、黄色い白菜の花/永い冬を耐えたわたしは/草のように甦える。//愉しげなひばりよ/どの畝(うね)からも歓喜(よろこび)に舞いあがれ。//青い空は/ほのぼのと高いのに……(詩は終わりの部分を友人が手紙と共に捨て、欠落しています)

さて、道を戻るとみな待ちくたびれていたようで
車ですぐに墓地へと出発しました。

長くなりますので、以上を24日後半の前半部とします。