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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

詩集雑感

詩集『ハッキョへの坂』は
朝鮮学校無償化除外反対の思いから生まれた詩集です。
またそれは同時に
「詩とは何か」に対する私なりの今の答えを指し示す一集であるといえます。

詩集というものはつねに
「詩とは何か」に対する
それぞれの書き手の答えじゃないでしょうか。
恐らく歌集や句集よりも
詩集とは決して正解のない答えとして
問いにあてどなくさらされるものではないでしょうか(それだけ鍛えられると同時に、俳句や短歌よりも詩論や批評で無駄なエネルギーを費やす羽目にもなる)。

「詩とは何か」とは
現代詩が始まってから百年がたつ今でも
答えが出ていない問いです。
(答えが出ないものが詩といえますから)
いってみれば現代詩とは
どのような表現のあり方が現在において
最も「詩とは何か」にふさわしい答えなのか
を競い合いつつ、つねに揺れ動くジャンルだといえます。

答えは、どんな時代においても多岐にわたっています。
原理的にも時代的にもそれらは
修辞やら思想やらコトダマやら社会との関係やら言語美やらと
それぞれが決してゆずりあわない詩観にもとづいているので
けっこう熾烈なたたかいが繰り広げられるわけです。

詩集というものが出されるたびに
あるいは詩が書かれる瞬間ごとに
詩の世界という小さなため池では
いわば「なわばり争い」が生まれているといえます。
コップの中の嵐とはいえ
そのじつ詩を動かそうとする力と動かすまいとする力が
はげしくせめぎ合うのです。

誰もが一笑に付す現代詩の世界ですが
書き手は必死です。
誰もが自分の詩こそが「詩とは何か」に対する答え、
つまりこの世の固定観念をひそかにうちやぶるものであると
一種信仰のごとくつよく信じながら
詩を書き、詩集を出していきます。

『ハッキョへの坂』帯文にある
朝鮮学校無償化除外反対」というメッセージもまた
もはや政治や社会問題のためのものではなく
「詩とは何か」をめぐってたたかうための旗といえます。
そして「詩とは何か」をめぐるたたかいこそは
じつはこの世でもっとも本質的で熾烈なたたかいなのだと思います。