月刊誌「高一時代」の投稿欄に初めて掲載された詩。
選者は故山本太郎氏です。
稚拙で恥ずかしいですが、ブログの気軽さに乗じ、記録もかねてここにアップします。
「浮遊物」とは何か正確にはもう分かりませんが。
いわばなんらかの「集団的なもの」のたとえだと思います。
幻像
誘蛾灯に群がる
あの白い浮遊物は?
存在のこわれそうな、
紫色に震えている奴──
幽遠からすべり出た夢の産物
晩夏の夕べ
私もそれを見た。
空が音を飲んでいた。
悲しかった。
何だか悲しかった。
それはやたらののしり合い、
決して融合を見せなかった。
昔も今もこんなふうなのか。
私は悲しかった。
それは生き物ではなかった。
自らを野心と弁護し、
法則的に進む物体
彼らは生きていると言い張るのだが。
アセチレンの魔力は、
あらゆる感情を覚醒させ、
あらゆる虚偽を真実の溶炉にぶち込む。
蘇ることを忘れた空から、
夜の予感の這う木立の中から
同じ色の、同じ形の浮遊物が誘われる。
哀しい行列──。
私は小石を、
青白い燈火に投げた。
手ごたえはなかった。