#title a:before { content: url("http://www.hatena.ne.jp/users/{shikukan}/profile.gif"); }

河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

アンソロジー作品「せみ」

アンソロジーの付録の冊子から。
朝鮮高級学校三年生が書いたものです。

せみ   

夏のせみの鳴き声と共に君達の心の叫びが
聞こえてくる
せみは鳴き続け死んでしまう
だけどせみは次々と鳴き続ける

君達の心の叫びは果たして届くだろうか
せみは夏に鳴いて自然や私たちに夏を告げる

頭の固い政治家たちに君達の声は届くだろうか
人間にこの不公平さが正せるだろうか

せみとは死者の声という人がいます。
中上健次(昨日が命日でした!)も
紀州の山の中で蝉の声を
南無阿弥陀仏」あるいは「南無妙法蓮華経」ときいたのでした。

この生徒の作品における「せみ」は
よりよい社会をのぞんで生き死にを繰り返してきた
すべての人間の魂の声
ではないでしょうか。

「君達の声」とありますから
これはまた、今無償化を心の底からのぞむ
朝鮮高級学校の生徒たちの魂の声でもあるでしょう。
夏の光の下に蝉の声があふれかえるように
彼や彼女が抱く、魂の不安と希望・・・

最終行の
「人間にこの不公平さが正せるだろうか」
という問いかけに
私の胸は鋭く突かれたのでした。

生徒が投げかけたこのぎりぎりの問いかけに
私たち大人は何があっても応えるべきです。