仙崎のあと、萩の松下村塾に少し立ち寄った後、
北長門海岸国定公園にある笠山の椿群生林へ。
この笠山は、萩城の鬼門(北東)にあたっているので、
毛利藩は立ち入り禁止にしていたそうです。
その結果明治になって禁止が解かれるまで
数百年自然林になっていました。
大きな木は伐採されましたが今でも当時の鬱蒼とした面影は残っており、
10haの広さに様々な種類の椿が25000本自生しています。
歩いていて、ただならぬものを感じました。
海からの強風のために
椿たちは枝と枝どころか幹と幹をぶつけあいざわめきあい、
まるでうごめく動物のようなエネルギーを感じさせました。
強風に解き放たれた、椿たちのどうもうな本能・・
根もとには、密やかな惨劇の証のように真っ赤な花首たち・・
ぽっかりとひらいた空き地には
誰にも見られていない桜たちが豪華絢爛に咲き乱れていたのにも驚きました。
誰も見ていないで咲きほこっている花は怖い。
風に呼ばれ風を呼び、風と一体化している木々は恐ろしい。
人間を越えた言葉で人間を越えたことがらを語り合っているように思えて。
その見てはいけない現場にふと入り込んだ人間は
ぞっとするほどの美しさに魅惑され、まるでつみびとのように畏怖してしまうのです。