2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧
齋藤貢『夕焼け売り』(思潮社)は、今も見えない放射線の恐怖と向き合う核被災地の痛みを、類いまれな詩的幻想の力で伝える。聖書の楽園喪失と一粒の麦としての「ひと」のイメージが作り出す不思議な時空は、古代でもあり未来でもある。訥々とした語りは原初…
昨夜、新宿・紀伊國屋ホールで行われた辺見庸氏の講演「存在と非在/狂気と正気のあわいを見つめて—『月』はなぜ書かれたのか」をききました。最新刊『月』刊行を記念しての講演です。風邪による熱を押しての二時間半、氏は会場に集った人々を、「友人たち」…
松村栄子『存在確率―わたしの体積と質量、そして輪郭』(コールサック社)は、一九九二年「至高聖所(アバトーン)」で芥川賞を受賞した小説家が、十代から二十代後半にかけて書いた詩をまとめた。「卒論はフランスの詩人のイヴ・ボヌフォワについてであり」…
共に立つ夜 ー伊藤若冲「伏見人形図」 河津聖恵火の日 四条河原町交差点のマルイ前に集う人々の背後に人形たちが現れる都の大火は歴史の彼方へ鎮められたが人形たちはまちの辻々に散らばった埋み火を拾っては食らい二百年を超える命を繋いで来たらしい火の日…