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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

「ザ・コーヴ」がみたい(二)

京都は朝、素晴らしい青空でした。今は少し雲がでてきましたが・・。Image641

「「ザ・コーヴ」東京での上映すべて中止」
という新聞記事が、新しい首相誕生のニュースよりも、どうしても気に掛かります。

すべてですか。
時折、私の中には、東京で一体何が起こっているのだろう・・
という不安が漠然と生まれますが(彼地出身であるからか)、
今回は、具体的な場面が目に浮かび(上映に抗議する団体の人々を、京都でも見たことがあります)
事態の深刻さがひりひりと伝わってきます。

一部の人がやっていること、というようにはけっして無視できないと思います。
この国を覆う現在の(あるいは過去からの)空気の実体が
ふと鎌首をもたげてついにそこここに顕れてきた、その一つの深刻な事例としか思えません。

同じように上映中止騒動があったドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』の監督、李纓(リ・イン)さんの著書『靖国』をひもときました。

「一連の上映中止騒動の後、最終的に日本で公開できたことはすばらしいことでした。日本の社会に、表現の自由を奪う「ウィルス」に対抗する力があって、健康的な体勢を取り戻したということですから。日本には異なる文化を尊重する多元的に価値観があり、映画という文化においても、自由な表現活動の権利がしっかり守られたということです。自由と平等の精神に基づく戦後の日本社会の体勢は崩れていませんでした。」

つまりこういう場面でこそ、日本の外部にとって、「日本」という集合体の健康状態が分かるようなのです。
それは言い換えれば
外の目には今の日本がたしかに戦前と手を切ろうとしているかどうか、
ということの証明にも映るのでしょう。
それが証明されたことに李さんはとても喜んでいるようです。

私も『靖国』を見に行きましたが、本当に素晴らしいドキュメンタリーで、
一瞬たりとも目が離せませんでした。
映像でしか訴えられない何かを感じたシーンがいくつもあった。
あの映画を見たからこそ、靖国神社に足を踏み入れる勇気を持てましたし、
靖国について考えることはけっして精神を貧しいものにするのではないとも思えました。

今回の「ザ・コーヴ」もドキュメンタリーであって、
いずれにしても社会に一石を投じるために作られたもののはずです。
そこにはとりわけ日本社会に訴えようとしている何かがあるとも予感します。
結局失望しようとも、内容がどうであっても
かけらほどでも何かを受け止める可能性を奪ってはいけない、ましてや暴力が奪うことはあってはならないと思います。