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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

「詩作の砦」の前に立つ(「東柱を生きる会」の終わりに)

尹東柱(ユン・ドンジュ)が治安維持法違反の容疑で、この地にあった武田アパートから下鴨署に連行されたのは、一九四三年七月十四日のことであった。
北間島(現中国吉林省)に朝鮮人として生まれ、一九四三年渡日、同志社大学で学ぶ傍ら、清冽な詩を作っていた場所が、この地高原である。
一九四三年二月十六日、祖国の解放を祈りながら、彼は福岡刑務所で二十七歳の短すぎる生涯を閉じることを余儀なくされた。尹東柱の思いは彼の詩作の砦であったこの地に、今なお息づいている。」

7日に愛沢さん、丁章さん、蔭山さん、朴さん、私で、 P2050007
その前に立った京都造形大学高原校にある東柱の詩碑にある碑文です。
とてもいい文章だと思います。
とりわけ「清冽な詩」と「詩作の砦」という箇所に心ひかれました。

「清冽」。
「水がきよくつめたいさま」(広辞苑)。
この言葉は東柱の詩が私たちの心に与える
いわば「詩的知覚」を言い当てています。

あの闇の時代にどうしてあのような「清冽な」詩を書き得たか。

それは永遠の謎です。
その謎から私たちは
無限の問いかけと答えを引き出すことができるでしょう。
私たち自身と対話することで。
私たちの中のもう一人の私
である東柱と出会いつづけることで。

「詩作の砦」とは
あの「自画像」にある「井戸」のような場所であるはずです。P2050008
現実の場所を越えた、
東柱だけでなく
すべての人間の魂の底にある
真に自由なもう一つの世界。
水面に映し出された世界。
他者への愛がひそかにこんこんと湧き続けるありか。
それが自分だけのものではない
と信じえたからこそ
彼は詩を書き続けたのではないでしょうか。

右写真は韓国ケーブルテレビの朴さんに話をする愛沢さん。