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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

紀州・熊野での二つのイベントが終わりました

紀州・熊野での二つのイベントが終わりました
 昨日5日の田辺市立美術館での講演「原勝四郎が放ち続ける詩の光」と、本日6日の熊野市の紀南ツアーデザインセンターでの阪本浩子さんとの合同朗読会をそれぞれ無事終えました。不慣れなことも多く、疲れましたが、とても楽しく充実した時間でした。お世話になった皆さん、どうも有難うございます。これら両日についてはまた詳しく書きます。
 今回もつくづく実感したことは、紀州・熊野という場所は余計なものを忘れさせてくれ(あるいは忘れてもいいとあらゆる角度から息をつかせてくれ)、生きることにとって大切なものを下の方から思い出させてくれるということです。光の当たる早春の草萌える地面や、白い小石が空を見上げる澄明な川底にもたとえられるような、低く本質的な次元にある何かを。
 じつは来る前、少し自分について思い悩むことがありました。大阪から田辺行きのバスに揺られながら、どこかあてどない気持のまま眠り込んだのですが、ふと目を覚ますと、車窓の外はすでに紀州・熊野の光に包まれていました。目覚めた私は、よるべない幼子のごとくしばらく夢うつつでいました。そのぼんやりした意識の中へ、ぐいぐいと現れてきた山々の力強い稜線、生き物のようにゆたかな雲の量感に圧倒されたのです。なぜかとても大きく新鮮に思え、驚きました。そして、このところ私の中に入り込んでいた原勝四郎の絵画の印象が無意識に投影され、山や雲や海や空が、まるで原さんの絵から抜け出てきたように見えました。時間のエアポケットのようなその一瞬、私は深くふかく分かったのです。画家が表していたものが、紀州・熊野のいのちそのものであることを。意味も理解も越えて、鮮やかにふかく了解したのです。