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詩空間

河津聖恵のブログ。この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

3月30日付朝日新聞朝刊「君が代 教諭の再雇用取り消し」

昨日の朝日新聞社会面に素晴らしい取材記事が掲載されていましたので、アップします。

生徒を大切に思うがゆえに君が代斉唱時の起立しなかった教諭が
再雇用を取り消されました。
この先生の深い思いと橋下さんの処罰の理由を読み比べてみれば、
後者の異様な浅薄さが浮かび上がります。

なぜこれほど浅い無理な論理を駆使してまで、不起立教員を罰しようとするのか。

君が代条例において「君が代」起立斉唱は
教育においてとても大きな行為のように言挙げされますが、
ここで言われているように
じつは本来はとても小さな、生徒の記憶にも残らない行為であったはずです。

かなり前のことになりますが私などは歌ったかどうか記憶にもありません。
君が代」とはもし存在すべきだとすれば
そのような空気のような存在であるべきものではないでしょうか。
強いられ、罰をおそれて、石を呑み込ませられるように
歌うものではないはずです。

いえ、「君が代」だけでなく「歌」とは強いられてはならないもの、
生命の発露としておのずとうたわれるもの
人と人をつなぎ、関係性を蘇生させ、
共同体に歓喜を与えるものでなくてはならないはずです。

君が代」は今それとは真逆に、人を分断し、共同体を苦悩で縛るものになっていないでしょうか。

橋下流考:不起立は罪ですか?
君が代教諭の再雇用取り消し
──大切なもの 生徒の外側じゃない

 卒業式で君が代を立って歌わなかったとして、大阪府立高校の男性教諭(61)が4月からの再雇用を取り消された。大阪で、君が代を理由に先生が職を失うのは初めてだ。13年前に国旗国歌法ができたとき、私は全国の卒業式のルポを書いた。今、その時とは比較にならないほど不起立教員を見る社会の目は冷たいと感じる。この話題を取り上げるだけで「ルールを破る教員の言い分をなぜ掲載するのか」と読者から抗議を受ける。でも、不起立は人から職を奪うほどの大きな罪だろうか。答えを求めて、再雇用を取り消された男性に会いに行ったも。
 工業高校で機械実習を教える、小柄で笑顔を絶やさない男性だった。 18年前にこの高校に来て以来、毎年、卒業式の朝には時間休を取り、校門の外で「卒業おめでとう 国旗・国歌の強制に反対します」と書いた手製のビラを保護者や生徒に渡していたという。その後式典に参加し、国歌斉唱の時は教員席で着席。今年の卒業式は非番だったので休暇を申請しなかったが、それ以外は昨年までと同じ行動を取った。式が混乱したり、保護者や来賓から苦情が来たりすることもなかった。
 だが9日後、府教委から戒告処分を受けた。理由は「勤務日でないのに学校に来て、校門の前で職務命令に違反する内容のビラを配り、校長から保護者席に座るよう指示されていたのに教員席に来て座った」。
  教諭は「文面だけみると、どこの過激派かと思うでしょう」と笑う。でも、強制に反対する思いは素朴だ。
  学生時代、竹本源治の詩「戦死せる教え児(ご)よ」を読んだ。「逝(い)いて還(かえ)らぬ教え児よ/わたしの手は血まみれだ/君をくびったその綱の/端を私も持っていた/しかも人の子の師の名において」。教師になるにあたり、「国家よりも個人を大切にする」という誓いは動かせないと思った。
 「もう一つ。生徒の外側をそろえることにも抵抗がありました」。工業高校に通う生徒の偏差値は高くない。勉強についていけず、投げやりな態度を取る生徒に、授業中は前を向け、寝るな、なんて外側の話ばかりしたらすべてが止まってしまう。「だるいと言われても、横を向いていても、気持ちはいつでも受け止めてると態度で示し続けることが大事。まじめに授業をしていれば『伝わった』とわかる瞬間が来る」。生徒とバトルを繰り返しながらつかみとった揺るぎない思いだ。
 君が代の強制は、究極の「外側をそろえる行為です」。そこにこだわるあまり、大切なものが失われはしないか。
 この仕事は大好きだ。いつも笑顔なのは「明るくしていれば、生徒が年の離れた大人と話をするきっかけになる」から。最近は、就職してもすぐにやめてしまう卒業生が目立つ。「みんな社会に出て年や立場が違う人間と話すのが下手だから、心配なんです」
 卒業式の国歌斉唱は、そうした教育活動の何万分の一にすぎない。それをすべてのように言う主張に職を奪われたことは「率直に悔しい」。手取りで月15万円の収入を失うのも痛い。堺市大阪府に講師登録をしたが、処分歴があると再就職は難しそうだ。
 教諭は29日、大阪府人事委員会に今回の処分について不服申し立てをした。

不起立教員を巡る橋下市長発言
「一教員がルールを無視して座るなんて言ったら民主国家は成り立たない。不起立教員は公務員をやめなきゃ」「教育で一番重要なことはルールを守ること。自分の考え方と違っても社会のルールに従う。これを教員が子どもに教えられないでどうするのか」(3月14日、記者会見で)
「当たり前のことをわからない人が教育現場にいるのがおかしい。思想・信条の問題ではなく、服務規律の問題。教育委員会はきちっとマネジメントしてほしい」(3月21日、記者会見で)

同僚「慕われる先生」
府教委は、教諭の再雇用を取り消した理由を「勤務実績が良好でない」と発表した。だが校長や同僚は、教諭の教師としての力量を高く評価する。校長の今年度の評価は、「学ぶ力の育成」「自立・自己実現の支援」とも「十分」で、総合評価も5段階で2番目に高いS評価だった。
「人の輪を作るのが得意。ソーラーカー部の顧問。地域や企業との連携も熱心で、休日をいとわず働いていた」と校長。戒告処分を受けた際、教諭は府教委から「上司の職務命令には従います」という誓約書を持ち帰った。校長は「先生を失いたくない」と提出を促した。教諭は署名・押印して出したが、再雇用は取り消された。
 同僚の一人は昨春、生徒らが定年を迎えた教諭を胴上げしたのを見
た。「あんなに慕われる先生は他にいない。生徒を尊重し、決して馬鹿にしないから、どんなワルも心を開く」。処分取り消しと再雇用を求め、同僚の8割を超える署名が集まった。
 府教委教職員人事課に、再雇用更新を拒否した理由をたずねた。
 昨年、教職員に国歌斉唱時の起立を義務づける君が代条例が成立し、今年1月には全教職員に起立斉唱を求める職務命令を出すよう通達を出した。にもかかわらずビラを配布し、着席したことは「勤務実績が良好とは見なせない状況」になった。だが教諭はこの日は非番で職務命令は出ていない。「休みの人間に職務命令は出せない」(校長)からだ。府教委は「事前の校長からの指示を口頭での職務命令とみなした」としている。

社会の圧力強い─取材の記者は

 君が代条例成立後初の卒業式の取材は緊迫感が漂っていた。カメラが追うのは生徒ではなく不起立教員の有無。校長の取材も不起立の指導に集中し、不起立教員がいた中学校には脅迫めいた抗議電話が相次いだ。
 今回の記事には当初、教諭の笑顔の写真をつけた。温かな人柄が出ていたから皆さんに見てほしかった。でも直前に「自分は何ら恥じるところはないが、学校や家族に迷惑がかかる」と、断りの電話があった。不起立教員を「根絶」しようという社会の圧力は今、それだけ強い。何が起きているのか、考え院けていきたい。(阿久沢悦子)