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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

今詩に何ができるか

私はこの悲劇のために詩を書けるでしょうか。

この震災と原発被害がもたらした果てしない悲劇を
当事者ではない私がどう詩によってうったえることができるでしょうか。

現地に駆けつけることもなく
テレビ画面の映像から受ける間接的な衝撃から涙を流したとしても
しかしそれは本物の涙でしょうか。
涙の真偽を問うまもなく、詩を書くことはできるのでしょうか。

今遠く離れて書かれる詩は
一般的な悲しみや怒りや励ましの定型に
からめとられないでしょうか。
むしろ自分自身を安堵させるためのエゴの行為ではないでしょうか。
暖かい部屋で、食料も水も確保し、
何を分かったように書けるというのでしょうか。
いいえ、そのように逡巡すること自体、卑怯かもしれない…。

今詩には
「今詩に何ができるか」という問いかけが
無限にからみついてきます。そして、
なぜ人は遙かな昔に詩というジャンルを生みだしたか
まがりなりにもなぜ今もなおそれは存在するのか。
原点とアクチュアリティーが、死者や被災者や破壊された自然から問われています。

そして何よりも
詩を書く者がどれだけつよく詩を信頼してきたか、信頼できるかが
試される時だと思います。