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詩空間

河津聖恵のブログ。この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

5月4日/劇団アランサムセ「歌姫クロニクル」

5月4日、大阪市立青少年センターで
劇団アランサムセの「歌姫クロニクル」を観ました。Kuro
李英哲原作・脚本、金正浩演出。
李さんといえば、
以前月刊「イオ」に掲載されていた小説「水曜日たち」を読み、
詩性と歴史性をきわどく交錯させた実験的なその作風に一瞬で魅了された作家です。
今回の原作も、同誌に掲載されていたもの。
脚本もご自身で書かれたそうです。

物語は少し時間が経ったのでこまかいところは追えませんがざっと。

歌姫ナビが率いた朝鮮人の若者たちのバンド「ナビ&パルチザン」が、
廃校となった朝鮮学校を占拠して行なった、
伝説の“7days籠城ライブ”から10年後。
朝鮮人に(そして日本人にも)自己否定を強い続けている苛酷な日本社会に
人と人を連帯させる歌が消えて久しい。
再び廃墟となった朝鮮学校も近々取り壊され、
跡地に大手スーパー・マーケットが建つという。
そんな中、この町で育った朝鮮人の少女たちが、町おこしの祭りをきっかけに、
ガールズ・バンドを作ろうと乗り出す。
彼女たちは、まだ幼かった頃に、“7days籠城ライブ”を見ていた。
その後行方知れないナビにまつわる人々の記憶や噂から、
いつしか歌姫の魂は少女たちに乗りうつる。
「ナビ&パルチザン」の幻影を追いかけつつ、
少女たちは歌を蘇生させるために立ち上がる。
まるで生命の欲望のように。
朝鮮人はもういやだ」と反語の叫びを上げる朝鮮学校生もUtahime
原発被害から逃れてきた福島の日本の少女も、
日本人のように生きてきた朝鮮人の少女も、
籠城の最後にみずからを捧げるようにチョゴリを切り裂いた歌姫の意志を受け継ぎ、
取り壊される校舎に立ち尽くす。
舞台は朝鮮学校朝鮮人の未来を観客に問いかけて終わる─

劇中で歌うナビ役のfasunさんの歌声も素晴らしかったです。「チョゴリ」という歌は、一昨年、東京朝鮮高級学校で見た、廊下にチョゴリの形の色紙にハングルで書かれていた詩であることを、友人の許玉汝さんが教えてくれました。

「まぶしいチョゴリの白で この身体を包み/夢におどるオッコルム やさしい風になびかせ/ウリハッキョへと続く坂道を 毎日のぼってゆく/愛しい妹たちよ オンニの話を聞いておくれ/・・・/ふるさとの地がひとつの歴史を刻む日/おまえたちよ ついに民族の花と咲き誇れ/つつじの花を運ぶ 統一の風に乗ってゆけ/チョゴリは ふるさと、祖国へとはばたく われらの翼」

われらの翼。そう、チョゴリは翼なのです。ナビ(蝶)の�注ェです。

少女や兄や元教師の台詞には、
現在朝鮮人と日本人の双方に突き付けられた痛みが
巧みに、リアルに表現されていました。
劇が佳境に入る頃には、
私も自分の中で少女たちと共に語り、叫ぶ思いがしました。
歌とは何か、それは魂のつながりを蘇生させるのか、
あるいは国家という幻想を復活させるか、ひいては詩とは何かと
さまざまに考えさせられました。
朝鮮学校など、歌などなくなってしまえ」という
日本人の警察官の声を借りて発せられていた国家の悪意は
歌い連帯する者たちへのリアルな挑戦として響き残りました。

そして舞台美術も、シンプルだけれど象徴的な完成度に達している
素晴らしいものでした。