愛知県の西尾市岩出文庫から、『詩人茨木のり子とふるさと西尾(増補版)』をご恵送いただきました。
ふるさと西尾の暖かな空気と、昭和という時代の光と影の記憶の中で、この国が生み出した最良の詩人と再会する喜びを感じています。
作品、テーマ別の解説と貴重な写真、友人知人、会員などの寄稿文、日記や作文、その他参考資料が、130頁という分量に非常にうまく収まっていて、大判のページを開いているととても楽しい気分になってきます。
ちなみに私も、2017年に会報「詩人茨木のり子の会」に寄稿した「二月に煌めく双子の星」全文と、同年に行った講演「茨木のり子と尹東柱」の内容紹介で参加させてもらっています。
茨木さんの詩は平易だけれど、どの言葉も人間というものの無限の深さに届こうとしていて、読む私の中に眠りこむ「人間」を叩き起こしてくれます。
最近、Twitterに以下のような文を投稿しました。
「細々ながら自分なりの反戦連詩を書き続けようと思う。人間の悪が無限の戦争の姿で剥き出された今、たとえ僅かであっても自分から消え去らない反戦の思いがある。それこそは詩の源泉だと確信する。反戦の意志を主体にして詩を書くことで、ニヒリズムと向き合う。美しいサイコパスにはならない。」
「もちろん反戦詩であるためには、ニヒリズムと戦うための理想が必要だ。それも観念的ではない、肉体的な理想。それはなんだろう。」
人間であるために詩を書く。詩を書くために人間であろうとする。詩作において今とてもこの往還が重要だと考えているところでした。そんな折送られてきたこの一集は、私にはまさに詩的恵みともいえるもの。
現実に生きる私はじつは人間以下のエゴイスティックな存在かも知れない。けれどこんな私でも詩という次元においてだけ、本来の意味での人間であること、あろうとすることは可能ではないかー茨木さんの詩と生き方は、そういう希望を私にあらためて与えてくれます。
ゆっくりこの一集を味わいまた記事にしたいと思います。