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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

大門正克『戦争と戦後を生きる』(二)

大門正克さんの『戦争と戦後を生きる』はImage739
具体的な人々の軌跡や語りの中から
時代の変化と特質を探っています。
「時代と人びととの双方向のなかで歴史を書くこと」
の試みです。

この書では主に五人の人々を中心に焦点が当てられています。

少女時代に一家で満州に渡った女性。
召集されニューギニアで死亡した青年。
東京大空襲で妻を失った在日朝鮮人
大連で生まれ日本で空襲に遭った女性。
東京生まれの台湾人の少女。

彼らは、日本の勢力拡大の結果として
国内、大陸、南洋へとさかんに移動しています。

15頁にある「5人の移動範囲」を説明した地図が
何だか切ないです・・・。
行きたくて行った場合もあるし
行きたくなくても行かざるをえなかった場合もあるのですから。
でも「行きたい」も「行かざるをえない」も
同じようにただ移動の経路を刻んでいるのみです。
巨きな力に屈し、あるいは乗っかって
ひたすら生き抜こうとするけものたちの道のように。

「一九三〇年代から五〇年代なかばの時代は、人びとの生存が危機に瀕し、生存の仕組みが大きく変わった時代であった。ここでいう生存は、生命から生活、労働までを含む。生存の仕組みとは、家や村や社会的諸関係、国家の政策など、保護と依存、共同のつながりで生存を成り立たせるものである。生存の仕組みには、歴史性、時代性が張りついている。」