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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

許さない、そして許されない─大阪の朝鮮学校補助金カット

 昨日の大阪府議会決議(府内の朝鮮初中級学校9校への補助金計約8300万円を1校分約800万円に減額)についての記事です。
 まだ職員室に肖像画がのこっているから。それだけが理由です。そんないいかげんで、最初から意図的なやりくちが、数をたのみに府決議としてまかりとおる恐ろしさ。大阪維新の会は、朝鮮学校の歴史を知ろうともせず、生徒の姿を見ようともせず、このような蛮行を決行しました。許さない、そして、許されない。大阪を、教育を、子供たちの心を、怠惰なマスメディアに誘導された俗世間の意向にそって踏みにじることは、この国のより良く生きようとするすべての人間が許しはしない。そして国の歴史を見守るすべての死者たちに許されはしないはずです。

2011年12月22日朝日新聞朝刊
「子と拉致 関係ない」─大阪の朝鮮学校補助金カット

 大阪の朝鮮学校に対する府の補助金の大幅カットが21日決まった。問題視されたのは、拉致問題が解決していない北朝鮮との関係や、金正日総書記らの肖像画。限られた一面に注目が集まることに、保護者や学校を知る人々は「またか」と落胆した。
朝鮮人であることに誇りをもって、堂々と本名を名乗れるように育てたい。その権利を政治に踏みにじられた思いです」。公立高校の民族講師をしている黄裕子さん(37)は今年、7歳と4歳の息子を中大阪朝鮮初級学校大阪市東成区)の1年と幼稚園に入れた。
 自身は公立学校の出身。「周りと違う」と引け目を感じて生きた経験がある。朝鮮学校では在日の歴史や民族名を名乗る意義を学べる。いきいきと通う姿を見て、良さを実感した。
 肖像画は正直、身近ではない。ただ、「子の将来を考えて下ろすかどうかは、保護者と学校が話し合って決める問題。補助金のために下ろすのは違う」。夫とはそう話してきた。
 今年度、小中の計8校約1100人分が削減された。府内の初級学校の校長は「橋下徹前知事が出した条件で真剣に討論してきたのに、議会は次の条件を言い出した。約束違反ではないか」と嘆いた。教員の給与は何年も滞りがちだ。補助金カットは重くのしかかる。
 弟の薫さんが2002年まで北朝鮮に拉致されていた蓮池透さん(56)は「在日の人、特に子どもは拉致問題に関係がない。拉致問題を持ち出すのはおかしい。八つ当たりのような気がする」と話した。
 国の審査 継続中
 朝鮮学校が、昨年度から始まった国の高校無償化制度の対象になるかの審査は、文部科学省でいまも続けられている。審査が通れば、生徒1人あたり約24万〜約12万円が支給される。
 都道府県独自の補助金は対応が分かれる。東京都の石原慎太郎知事は今月、「反日的内容の教科書」などを理由に、新年度は予算計上しないことを検討すると表明。兵庫県は「朝鮮学校も他の外国人学校と同様に扱う」として、従来通り補助金を支払っている。
 問われる 社会の成熟度
《解説》北朝鮮という対話の難しい国家との向き合い方と、在日朝鮮人の子どもたちの権利がまた同一線上で語られた。
 確かに、朝鮮学校北朝鮮と無縁とは言えない。北朝鮮から多額の支援を受けた歴史的経緯から、金正日総書記らの肖像画を掲げている。だが、時代は変わった。今、肖像画への賛否は内部でも分かれる。
 拉致や核の問題と朝鮮学校を安易に結びつける排外的な空気の中で、子どもたちは繰り返し傷つけられてきた。今回の補助金カットも差別と刻まれてしまうことだろう。
 折しも、金総書記の急死で北朝鮮が抱える様々な問題が報じられる。朝鮮学校の子どもや保護者は登下校にも神経をとがらせ、ハリネズミのようにして我が身を守るのに必死だ。
 橋下徹前知事と大阪維新の会補助金を盾に改革を迫ったが、少数者を孤立に追い込むやり方は、多民族・多文化共生をめざす社会とは相いれない。
 日本も批准している国際人権規約子どもの権利条約に民族的マイノリティーの権利がうたわれている。この問題で試されたのは、多数派が少数派の立場をどれだけ想像し、権利を尊重できるかという社会の成熟度だった。(多知川節子)