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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

海のひとしずく

今、この社会で、差別や不当な扱いとたたかう人はImage411
無数に生まれている。
無限に殖えていく。

昨日今秋には閉店する阪急デパートの前で
除外反対を訴えていた朝鮮高校の生徒たち。
その隣には職場での差別の署名を訴えるタクシードライバーたち。
河原町通りを渡った高島屋の前はさらにごったがえし
最低賃金・非常勤職員の待遇改善・派遣労働などの運動の
十数人のゼッケン姿の人々が
買い物客の波間にもまれていた。
交差点の信号が変わると
群衆の海は動きだし
どちらが誰が買い物客か支持者なのか批判者なのか
分からなくなっていった。
私もまたどうしたらいいか分からず
デパートの入口から避難するように入っていった。
そこにも群衆の海は侵犯し
誰が買い物客なのか労働者なのか避難する者なのか
分からない不穏なエネルギーは
きらめく宝石を収めるショーケースの並びや
それを売るというより護るかのような
美しい衣服の女性のほうにも押し寄せていくようで
その力にショーケースも女性もおびえて輝くかのようで
そして私自身もゆらゆらと
一端から暗いエネルギーの海に巻き込まれていくようで
怖かった
ような気がする。
昨日のその時、ではなく「いまのいま」。
言葉が書かれていくと同時に動き出す想像力が創り上げる
真実の虚構として。

朝鮮学校除外・待遇改善・賃金引き上げ
それら渦巻く怒りのエネルギーはひとつにつながっている。
私というひとしずくはハッと身の内から気づく。
おそらく格差と貧困がまねいた負の感情・鬱屈が
差別を招き、また差別をまねき
弱者へさらに弱者へとおしよせようとしている──
そのことを私というひとしずくは知りしずくとして青ざめるが、
それは私自身が海の一部となり果てるメタモルフォーゼの眩暈
のせいであり、
真実を知り青ざめればさらに
より青を深めるためにと
海は私を同化させ
ひとしずくとしての私を消していく。