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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

『社会評論』163号「BOOK WATCH」

『社会評論』163号「BOOK WATCH」に『朝鮮学校無償化除外反対アンソロジー』の書評Image973_2 が掲載されました。

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 本詩集は、今年の七月に、詩人の河津聖恵さんが呼びかけ人となり、刊行された。四月の朝鮮学校の排除決定から三か月が経過し、この問題を風化させず、解決をさらに後押しすべく、「言葉の暴力と差別意識を乗り越えた真の共同性を求めて」在日朝鮮人、日本人合わせて七九名の「うたびと」たちがこの呼びかけに応えた。
 詩・短歌に込められた思いはさまざまだ。日本社会の朝鮮民族への差別と対峙するとき、拠り所となるウリハッキョへの親愛の気持。そして強制連行、炭坑・鉄道敷設現場などでの過酷な労働、広島・長崎での被爆、家を借りられない、就職でも差別があるなど、戦後も変わらない差別構造への怒り。あらためて、今回の問題が単発的に発生した問題ではなく、「戦後」一貫して続いてきた日本国家による在日朝鮮人への差別の最新の形態なのだと思った。
 いくつか内容を紹介したい。
 朝鮮学校無償化排除に反対するチラシを撒いているとき、「大丈夫です」と言って受け取らなかった若者のあり様を問う詩(「大丈夫です」上野都)。その心の背景にあるものは、なんであるか。一言で過去とも未来とも決別してしまう、「大丈夫です」。その一言に、作者はこの問題の本質の一面を見抜く。
 「『拉致』という言葉は、もはや差別肯定の口実となりました。」(「差別の先にあるもの」金敬淑)という指摘は、大臣・地方自治体の長みずからが差別を先導し、それを黙認する日本社会の病を鋭く指摘している。
 この詩集には、「公然」の差別を許す日本社会を変えよう、という思いが込められている。

                                    (廣野茅乃)