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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

『環』47号(藤原書店)に「詩獣たち」連載第四回「アウシュヴィッツ以後、詩を書くのは野蛮か──パウル・ツェラン」を書きました。

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「詩獣たち」連載第四回「アウシュヴィッツ以後、詩を書くのは野蛮か──パウル・ツェラン」を書きました。

前回の中原中也との関連は、やはり「うた」というモチーフです。

中也は詩でしかうたえないうたをうたった幼獣でした。
その一方、無数の死者の声に耳を澄ませながら詩作をすることで生きえたツェランもまた
死者たちと共に不可能なうたをうたおうとしました。
ツェランは「アウシュヴィッツ以後、詩を書くのは野蛮か」という「野蛮さ」に挑み、死者に共振し続けた詩獣でした。

・・・「『アウシュヴィッツのあとではもはや詩は書けない』というのは、誤りであるかもしれない。」アドルノツェランの繊細に刻む言葉に、「うめき声」を聴いたのだ。みずから深い傷を負いうめく詩獣は、なおも残された言葉を信じ、「灰黒色の荒野(アウシユヴィッツ)」に詩の傷を刻んだ。レコードの溝のように繊細できわどいイメージと比喩と詩想で、死者の声の道を作った。詩というわずかな陰翳に寄り添って、覆いも庇護もない白い世界の中でとまどう死者たちが憩えるように。生者が共振することで死者と再び出会い、不可能な歌を共にうたえるように。

また、今号の特集は「原発放射能汚染─東日本大震災�U」。前号に引き続いての大震災特集。
まだ全部を読んだわけではありませんが、読み応えがあります。
季刊ならではの、また「歴史・環境・文明」というイヴァン・イリイチ鶴見和子などの精神的バックボーンがある雑誌ならではの、問題に徹底して踏み込もうとする姿勢が見て取れます。
とりわけ今号は、根本的ないのちをめぐる鼎談、除染の方法、健康被害原発の今の危険性、原発の開発の歴史における今回の事故の意味、安全規制政策、戦前戦後の電力政策、ストレステスト、「原発支持」の政治学など、総力をあげた紙面作りとなっています。大石芳野さんの福島の人々や風景の写真集からは、福島という土地の「まなざし」を隅々から感じ痛みが走りました。後藤政志さんの「事故状態が今も続いている福島原発」は、現在と事故当時の原発事故の真相を考える時必読です。「冷温停止」や「安定化に向かっている」という報道はいかに偽りであるかが分かります。
小特集は「沖縄の『自治』」。