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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

一ヶ月の山を越えて(四)

いじめの場面を思い出した、というところからですが、
いじめという言葉は独特です。
日本語固有のものだと私は感じています。
もちろん翻訳はできるでしょうし
諸外国にも相当する出来事があるでしょう。

しかしドイツに滞在していた時、
私はドイツのテレビ局が制作した「IJIME」という番組をたまたま見て、
気づきました。
これは日本語固有の意味とイメージを持ったものであり、
少なくともドイツ語には翻訳できないんだなと。
「KAMIKAZE」や「HARAKIRI」と
同じ次元で受け止められていることを
感じました。

西欧人固有のまなざしによって選ばれた映像は
偏向的な面もありますが
やはり普遍的なものです。
人権や民主主義や宗教の歴史を
教育や文化によって身体化している側の目が
映しだした映像は
私たちが日頃了解している社会像とはことなります。
内容的には
私たちにはよく耳にするいじめの話ばかりでしたが
声をあげられない「世間」の空気
対話や会話の乏しさ
言葉の貧しさ
自罰的な無表情・傍観者としての無表情・ことなかれの無表情
さまざまな無表情が
西欧人のカメラのまなざしの下でさらに不気味なエイリアンの無表情として映し出され
こんなふうに見られているんだな

なんともいえない気分になりました。
映像は自然や子供たちの公園が破壊されるシーンや
深夜の塾や満員電車の映像も織り交ぜられ
かなり「この国は、すべてを犠牲にしてまで先進国になったのだ」
というほどの
インパクトのある番組に仕上がっていました。
日本に敵意を持って作られたわけではないですが、
普遍的なまなざしの下で
「いじめ」がそんなふうに特殊で異様に映るのは当然でした。

私もまた
普遍的なまなざしを持ちたいと思います。
西欧人と同じというのではなく、
この国に今を生きる者の位置から。
だから詩を書いているのです。