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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

平和をうたう訴求力(5月28日付「しんぶん赤旗」)

平和をテーマとする詩は今決して少なくない。平和が脅かされる時代に平和を描こうとするのは、自然であるし望ましい。だが詩の世界を越え、市井の人々の琴線に触れる言葉はまだ生まれていない気がする。足りないのは何か。自戒も込め最近ではこう思う。足り…

金時鐘コレクション発刊記念イベント「今なぜ金時鐘か」にご参集を!!

金時鐘コレクション発刊記念イベント「今なぜ金時鐘か」が、いよいよ来週の土曜に大阪で行われます。私もパネラーとして参加します。金時鐘さんの生と詩は、植民地下朝鮮と戦後革命という、この国が忘却し抹殺した歴史のネガとして今こそ立ち上がってきてい…

歴史の明日をまえに

明日は、朝鮮戦争が終結する歴史の転換点を迎える。だが新聞のテレビ欄を広げてみても、朝鮮戦争と何だったのか、というような特番をテレビ局のどこも組んでいない。その様相はあまりにも予想通りで(むしろ今しか見ない視点でバッシングする論調ばかりがある…

4月20日付しんぶん赤旗「詩壇」第4回・「モダニズム」の自覚

現代詩とは、形式とテーマにおいて「絶対に現代的であらねばならない」(アルチュール・ランボー)詩のジャンルだ。では「現代的」とは何か。それは、詩人が自分と自分の生きる時代を考え尽くすことから獲得される、時代を乗り越える言葉の新しさ、ではない…

2018年4月16日付京都新聞文化欄「詩歌の本棚/新刊評」

現代詩から今思想やテーマが消えていると言われる。最近の詩誌や詩集から私もそうした印象を持たざるをえない。ある種の若い書き手達は「ゼロ年代」と呼ばれるが、それは年代というより思想やテーマの稀薄さを指す呼称だろう。その「不毛さ」の中で詩が唯一…

2018年3月23日付しんぶん赤旗文化面「詩壇」

〈人間〉を生み出す 河津聖恵 侵略戦争や植民地支配の加害責任を、日本人である私が我が身に引き受けて考えることは、辛く難しい。しかし支えとなる言葉がある。「〈人間〉はつねに加害者のなかから生まれる」。石原吉郎がエッセイ「ペシミストの勇気」で述…

信仰者の詩をどう読むか

キリスト教の信仰を持つある書き手の方の新詩集の帯文を書かせていただいた。来月には刊行されるだろうか。 頼まれた当初は、うれしく思いつつも、一方で不安でもあった。キリスト教の信仰を頭でしかわからない私が、その信仰をもといに書かれた詩に足を踏み…

2018年3月5日付京都新聞「詩歌の本棚/新刊評」

金時鐘・佐高信『「在日」を生きる』(集英社新書)は、日本語が母語の者が意識しにくい、日本語に潜む負の力を指摘する。五十音による発音の排他性と、情感に均されることによる批判精神の欠落だが、現代の書き手はそうした問題と無縁だろうか。むしろそれ…

2月26日付しんぶん赤旗文化面「詩壇」

「政治と詩」というテーマは難しい。この国では残念ながら詩人たちにも政治への忌避感が根深いが、そもそも詩という個人的でよるべない言語芸術が、政治という集団的で巨大な問題と向き合うことは、容易ではない。 だが東日本大震災と原発事故は、詩が個人的…

書評・中川成美『戦争をよむ』(岩波書店] )(図書新聞3338/2月10日号)

思えば最近まで、戦争を描いた作品をあらためて手に取ることはなかった。子供の頃は戦争体験者の父が多くの戦記物を買ってくれたし、世間で戦争の記憶が風化しても、両親が亡くなるまでは彼らの存在がおのずと記憶を喚起した。だが彼らの死後、私は戦争を急…

この青からより青なる青へ 歌集『青の時計』(荒川源吾)書評 ・「思想運動」2月1日、1015号

白地にタイトルと名前だけを刻印したシンプルで美しい表紙。前後の見返しには著者の住む町なのか、郊外の濃青の夕暮れの写真が刷られている。どちらもこの歌集の内容を見事に象徴する。前者は集中の歌「立つものが全て時計になる真昼晴天(はれ)の雪野に青く…

2018年1月29日付「しんぶん赤旗」文化欄・「詩壇」

日本の戦後詩は1947年、詩誌『荒地』創刊から始まる。昨年は70年目に当たったが、詩の世界に戦後詩を振り返る動きがほとんど見られなかった。なぜだろう。 同じく敗戦の荒廃から出発しつつ、『荒地』は詩人の流派として主にモダニズムの姿勢で書き、もう一方…

パリ初日(その2)

バリの中心からRER(高速鉄道)と路面電車を乗り継ぎ、サン・ドニ聖堂まで行きました(方向音痴な私一人では辿り着けなかったであろう)。ボール・エリュアールの生まれ育った街です。 レジスタンスの時代に書かれ、自由を奪われたパリの街に英空軍機から撒かれ…

パリ初日(その1)

パリ初日。幸運なことにこの街を愛する地元の元青年(永遠の青年だと思う)の案内を得て、初日から市内を半分歩いて横断し、さらにRERでサン・ドニまで足を延ばすことが出来ました。 パリに生まれ育ち、絵も音楽をバリで学んだ人。行き当たる小路の猫のことや…

1月15日付京都新聞朝刊文化欄 「詩歌の本棚・新刊評」

日本の戦後詩は一九四七年、詩誌『荒地』創刊から始まったとされる。その代表的な詩人北村太郎の詩集『港の人』(一九八八)が、昨秋出版社「港の人」から復刊された。三十年後の今読んでも(あるいは今だからか)、詩を書くことで廃墟を生き抜いた詩人の鋭…

パリでの朗読会のお知らせ

1月20日18時半から、下記のヴィジュアルポエジー展のヴェルニサージュで「月下美人」(『夏の花』所収)を日本語で朗読します。パリにゆかりある方々、当日いらっしゃる方はぜひいらして下さい。 月下美人は、少なくとも冬のバリには絶対咲いていない花。凍え…

イベントのお知らせ:12月5日トーク&朗読「絵と詩の対話--詩集『夏の花』の裝画をめぐって」

【イベントのお知らせです】 来月2日(土)から10日(日)まで玉川麻衣さんの個展が開催されます(3日(日)のみ休)。玉川さんは、今年5月に出た私の最新詩集『夏の花』の素晴らしい表紙装画(このブログのヘッダーにも使わせて頂いています)を描いて下さいました。…

2017年11月20日付京都新聞文化欄「詩歌の本棚/新刊評」

『桃谷容子全詩集』(編集工房ノア)が上梓された。今年で没後十五年となる詩人は、一九四七年有名な企業の創業者の孫として生まれたが、キリスト教者の父母の愛に恵まれず、裕福な家で魂の空白感に苛まれて育つ。生来の純粋さゆえに結婚生活が破綻した後は…

『三島由紀夫未公開インタビュー』続

前回のブログ記事で『三島由紀夫未公開インタビュー』を話題にしましたが、憲法九条についての作家の発言を、ご紹介しておこうと思います。 今折しも総選挙で、各党の憲法に対する考え方も、大きな争点になっています。 三島由紀夫の発言は、もう45年も前の…

『告白ー三島由紀夫未公開インタビュー』(講談社)

面白く読んだ一冊です。 今年初め、TBS社員が、自社のロッカーに保存されていた「放送禁止扱い」の数百本のテープの中から、これまで知られていなかった三島由紀夫のインタビューのテープを発見した、というニュースが流れました。 ニュースで聴くことが出来…

10月2日付京都新聞掲載「詩歌の本棚/新刊評」

仏文学者・詩人の粟津則雄氏が、第二次大戦末期京都にいた頃の思い出を、詩誌「雛罌粟(コクリコ)」5号に書いている。当時中学生の氏は、隣家の書斎で生涯の研究対象ランボーと出会う。軍需工場に勤労動員され疲れ果てる日々、氏を支えたのは「いつの間にか…

若冲ゆかりの二つの寺へ

先週と今週の土曜日、若冲ゆかりの二つのお寺へ行って来ました。 一つは宇治市にある黄檗宗の本山萬福寺です。インゲン豆にその名を残す中国僧隠元が開基です。 中国的なお寺に特徴的な、端がはねあがっている屋根が目を引きます。建物自体からどんな重い俗…

『パターソン』(ジム・ジャームッシュ監督)

ジム・ジャームッシュ監督『パターソン』をみました。『空と風と星の詩人』と同じく詩人をモチーフとした映画です。 『空と風と星の詩人』がモノクロで過去の朝鮮と日本を舞台とし、非業の詩人の宿命を「物語」として映像化した作品だとすれば、『パターソン…

「 映画『空と風と星の詩人』公開記念 詩人を偲ぶ秋の集い」

先週の土曜日(9月16日)に、同志社大学で行われた「映画『空と風と星の詩人』公開記念 詩人を偲ぶ秋の集い」は大変多くの方々が集ってくれました。 私も事前にSNSで頻繁に情報を流していたので、それを見て来てくれた人も意外に多くて、あらためてSNSの発信力…

詩人黒田喜夫の中国核実験への回答

昨夜のNHKスペシャル「沖縄と核」は衝撃的でした。今の辺野古の新基地建設も含めて、沖縄の基地問題は核という視点から捉えるべきだと思いました。 返還前の沖縄の恩納村のミサイル基地には、広島の原爆の70倍もの威力を持つ核ミサイルが多数配備されていた…

映画『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』公開記念 詩人を偲ぶ秋の集い

来たる9月16日(土)から京都シネマで、先日このブログでもお伝えした詩人尹東柱の生涯を描いた映画『空と風と星の詩人』が上映されます。 この上映に合わせて、尹東柱が文学を学んでいた同志社大学でイベントが開催されます。 私もトークに参加しますので、是…

辺見庸 目取真俊『沖縄と国家』(角川新書)

長年互いに惹かれあいながら、この対談で初めて会ったという二人の作家の対談集。明治から戦後72年も経つ今にいたるまで、国家の暴力にさらされてきた沖縄をめぐり、それぞれの立ち位置を見定めながら作家として生きてきた「個」の重みをかけて、語りあって…

四方田犬彦「旧植民地下の詩人たちの映像」(「現代詩手帖」9月号)をめぐって

「現代詩手帖」9月号に、四方田犬彦さんによる「旧植民地下の詩人たちの映像ー『空と風と星の詩人』、『日曜日の散歩者』」が掲載されています。 四方田さんは前者を「外部から受難と抵抗の神話を更新することはできても、詩を書くという行為の孤独さそのも…

朱と闇

伏見稲荷大社を訪れました。どこまでも立ち並ぶ千本鳥居の朱色が、九月の光に美しく映えていました。 とりどりに配色鮮やかな浴衣を着た多くの女性たちと擦れ違いました。笑いさざめきもまた、空気に優しい色を添えるよう。 何とはなしに、見ておきたかった…

8月21日京都新聞・詩歌の本棚/新刊評

『朴正大詩集 チェ・ゲバラ万歳』(権宅明訳、佐川亜紀監修、土曜美術社出版販売)は、韓国の民主化世代の詩人(一九六五年生)の訳詩集。メッセージ性と抒情性が一体となった長い各行は、ラップの詩のように一息に読まれる勢いと言葉の野性味がある。昨年末…