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河津聖恵のブログ 「詩空間」

この世界が輝きわたる詩のプリズムを探しつづける。

2010-01-01から1年間の記事一覧

詩とは接吻である

たいへん直感的ないいかたですがランボーの詩は接吻(古い言葉ですね)の詩だと思います。 この詩人はつねにざわめく茂みに、激動する社会にふれようとほそく敏感な指をのばしている。風に柔らかな髪をなぜられ上気した少年のくちびるを他者によせ詩がこぼれ…

野田正彰『虜囚の記憶』(三)

「日本人は分らない。片手に剣、片手にサクラ、仏様、神様を持っている。暴力とやさしさ、両面を持っている。どうして?」 この本に出てくる一人の被害者はこう問いかけます。 匿ってくれ、助けてくれた日本人もいた。 しかし一方で、他者に対し、残虐を極め…

「谷間に眠る男」への返歌

*ランボーの「谷間に眠る男」への返歌(のつもり)です。 さらに接吻のように 河津聖恵 帽子をかぶらない死者はさいわいである? いまもクレソンの茂みで帽子もかぶらず 口をあけて 眠るあなた脇腹の穴がいまだ真っ赤にいとおしそうにこちらを見つめる 私は…

野田正彰『虜囚の記憶』(一)

あるきっかけがあって、読み始めました。 昨年出た、精神医学者でもある著者による、渾身のフィールドワーク。そう言ってしまえば簡単ですがしかしすべての言葉が私の聞きたかった、知りたかった深さにあるもので、本当に感銘を受けました。 この本にみちみ…

野田正彰『虜囚の記憶』(二)

野田さんの筆致は、論文調でも情緒的でもありません。 しかし読むこちらに食い入ってきます。その理由は恐らく野田さんが、書かれる事柄を自分自身の真芯で受け止めているから。そして、そこから、自分自身とこの社会の人格のあり方を問いかけ今なお苦しむ戦…

「ならヒューライツニュース」159号

「ならヒューライツニュース」159号に エッセイ「他者へと向かいつづける─朝鮮学校無償化除外に反対して」が掲載されました。 このブログにも書きましたがこのニュースの発行元である奈良人権・部落解放研究所の方々が中心となって4月2日夕方に近鉄八木…

朗読考(二)

私は朗読のテキストに、アクセント、イントネーション、息継ぎなどのための音符記号のようなものを付けます。文のわきに点が打たれ、線が入れられているのではためには日本の伝統芸能の楽譜のようにも見えるかも。 よくわからないのですが私は自分の日本語が…

朗読考(一)

紀州での朗読会は、これで三度目です。昨年の9月に田辺市と熊野市、今年の2月に熊野市で行いました。朗読自体は共同の朗読会で何度かしたことがあります。 現代詩の朗読の方法は色々あると思います。すでに書かれてある言葉にいかに今このときの声をのせる…

10.23紀州朗読会についてのお知らせ

きたる10月23日、下記のように紀州で詩集『龍神』の朗読会を行います。「白熱する彼方」(ランボー)ならぬ、海は銀光り、山も緑やわらぐ10月の紀州での朗読会です。ぜひおこし下さい。 詩と音楽とことばの時間 紀州・熊野を詩(うた)う、奏でる、語る�…

「谷間に眠る男」が聴けます!

「谷間に眠る男」の朗読が以下のURLで聴けます!私はフランス語が分かりませんが、雰囲気たっぷりです。http://www.litteratureaudio.com/livre-audio-gratuit-mp3/rimbaud-arthur-le-dormeur-du-val-version-2.html それから原詩は以下で読めます。http:…

アルチュール・ランボー「谷間に眠る男」

最近ランボーの「谷間に眠る男」という詩に感銘を受けました。 16歳。1870年10月に書かれた詩。つまりちょうど140年前の今頃書かれました。 家出のさなかに遭遇した普仏戦争の激戦地の悲劇の情景を描いたものです。ひとしれぬクレソンのざわめき…

「Let’s」68号に「アンソロジー」についてのエッセイを書きました

日本の戦争責任資料センター(ボランティア編集部)発行の 「Let’s」68号に「詩人として朝鮮学校無償化除外に反対して」というエッセイを書きました。3月のアピールから8月のアンソロジー刊行までの経緯をつづったものです。 アンソロジーから石川逸…

宇佐美孝二『ひかる雨が降りそそぐ庭にいて』

宇佐美孝二さんの新詩集『ひかる雨が降りそそぐ庭にいて』(港の人)が出ました。 帯文を書かせていただきました。 私は以前から宇佐美さんの詩が好きでしたが、しかしなぜ好きなのかはなかなかうまく言えないでいました。けれど、つまりは、なかなかうまく…

9月29日朝鮮大学を見学しました

一昨日、東京の小平市にある朝鮮大学を訪問しました。 これで3度目。 今回は、歴史学者の大門正克さんと一緒ということで、ちょっと気がひきしまりました。 大門さんとは4月に出したアピール文がきっかけで知り合いましたが出会った時期がちょうど小平の地…

四方田犬彦「いつもすでに中上より遅れて」

「現代詩手帖」10月号に『龍神』の書評が掲載されましたので、転載します。「事後性」とは大切な出来事に遅れてしまった、という意識のあり方です。ちょっと「痛い」ところをつかれた気がしました。たしかに私にとって、紀州の自然は、詩を書かずにはいら…

中国・広州の生命力

夫が昨日、中国・広州市から帰国しました。 仕事で短期間の滞在でしたが、行く前は尖閣沖事件の影響を心配していました。しかし行ってみると、列車の中でも、町中でもそんな心配をふきとばすような人々の生命力にみちていてひたすら圧倒されたそうです。 受…

失礼しました・・・

昨日の記事(「「白熱教室」みました」)の中で「国会にもサンデル先生を」と感想をのべていた国会議員の方がいたと書きましたが、その時は誰か分からなくて、あとで人に教えてもらいました。共産党の宮本たけしさんです。まことに失礼しました。新聞で写真…

「白熱教室」みました

マイケル・サンデル教授の白熱教室、みました。一時間半でしたが(実際はもっと長時間だったんですよね)文字通り白熱していて(あるいは学生の緊張が伝わってきたのかな)あっという間に過ぎ去りました。 いやー、学生たちは準備おこたりなく、先生の本をし…

第2回「尹東柱を読む会」(一)

昨日、喫茶美術館で第2回「尹東柱を読む会」が行われました。第1回目にもまして、東柱の詩について、そして東柱をめぐって詩とは何かについて熱い意見が交わされました。 第一部講師は、日本キリスト改革派名古屋教会牧師で詩人でもある木下裕也さん。「尹…

マイケル・サンデル「白熱教室」

本日の京都新聞に、共同通信の配信で『これからの「正義」の話をしよう』の著者、政治哲学者のマイケル・サンデルのインタビュー記事がありました。 「なぜ、私の本がそんなに売れるのか。正義とか、倫理とか。人々が共有する『善』という価値観などにかかわ…

詩「友だち」

*許玉汝さんの詩への返歌として 友だち すぐ近くまで 虻の姿をした他者が 光をまとって飛んできている(吉野弘「生命は」) 河津聖恵 あなたはいつから私を呼んでいたのだろう 風は花粉の匂いをたしかに運んでいた海は遠くで輝きをましつづけていた私は呼ば…

朝鮮学校は他者を知る大切な現場

先日、文芸同の会合に出た翌日18日に 大阪朝鮮第四初級学校を見学させていただきました。入口の自販機の前で、校長先生が汗だくになって、空き缶潰しをしていました。同行していた野樹さんはそれ見て「いっぺんにその学校を好きになった」そうです。 うー…

水野直樹「朝鮮学校への「高校無償化」適用問題を考える」

大阪府の朝鮮学校の補助金給付の是非を検討してきた「専門科部会」が、補助金を出す条件として、教育内容に踏み込んだ条件を出したという報道がありました。しかしその条件が、橋下知事がこの会議に要望していた条件をほぼ引き写したものであることは、明白…

アリエッティ考

昨日みたアリエッティの映画の小さな人々のけなげな姿がどうして心に残ったのかを考えています。 心の襞をこまやかに描くストーリー展開キャラクターの可愛らしさ微視的な背景画の素晴らしさもあいまって私の魂の深くにある森のようなものがざわめかせられた…

「借りぐらしのアリエッティ」をついにみました

ずっと以前にレンタルで主題歌のCDを聴いて以来気になっていたアニメ「借りぐらしのアリエッティ」を昨日みてきました。御覧になった方は星の数ほどいらっしゃると思います。 私はまず音楽から聴いたわけですがセシル・コルベルの妖精めいた非現実的でアン…

お知らせ

ただ今をもって『朝鮮学校無償化除外反対アンソロジー』の販売を締め切らせていただきました。 ご支援ご協力ありがとうございました。

「言葉でたたかう、うたびとたち」

イオ10月号の書評です。なお今号特集は、大変興味深い朝鮮アニメ特集。 ***************** 言葉でたたかう、うたびとたち 張慧純 この本は高校無償化からの「朝高排除」を言葉による暴力の問題と捉えた詩人たちが、心の叫びを紡ぎ上げた…

第2回「東柱を読む会」のお知らせ

きたる25日、下記のような会を催します(私も主宰者の一人です)。お時間のある方はぜひご参加下さい。 私たちはこの会を、尹東柱という共通語によって語り合う、そしてさまざまな人と人とのつながりが広がっていくきっかけにしたいと考えています。 尹東…

「文芸同」の会合に出席しました

昨夜、大阪市東成区役所で行われた 在日の詩人たちの文学集団「文芸同」の会合に出席しました。出席メンバー九名全員が『朝鮮学校無償化除外反対反対アンソロジー』に参加した詩人たちです。 広島から駆けつけてくれた野樹かずみさんと一緒に参加しました。 …

マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』(終)

サンデルの言葉をくりかえします。 「自分の国が過去に犯した過ちを償うのは、国への忠誠を表明する一つの方法である。」 忠誠、というのはいかにもアメリカ的でしょうか。それとも、アメリカ的な愛国心のあり方を揶揄しているのか分かりません。 あるいは …